チンバッソは、コントラ・ベース・トロンボーンやテューバと同じ音域を持ち、通常テューバ奏者が演奏を受け持ちます。歴史背景や演奏用例については諸説ありますが、20世紀のイタリア音楽を代表する作曲家たちが、この個性ある金管低音楽器を積極的に用いました。
G.ヴェルディの『運命の力』や『椿姫』の自筆スコアには、“Cimbasso”と実際に記譜されていますし、『レクイエム』においては“Officleide”(オフィクレイド)のパートにチンバッソでの演奏を要求する指揮者も少なくありません。G.プッチーニの『トゥーランドット』や『トスカ』などで記譜されている4番トロンボーンのパートは、プッチーニ自身、チンバッソ特有の輪郭がはっきりとした音色と、時に鋭く劇的な表現をイメージして作曲したとの説が有力です。また、O.レスピーギ『ローマの松』4番トロンボーンのパートでチンバッソが用いられる演奏もあり、テューバとは異なるオーケストラの響きを彩ります。こんにちでは稀少楽器とも言われるチンバッソですが、当時の作曲家達がイメージしていた、「オリジナルの音」を現代に甦らせることができるでしょう。
また、チンバッソはトロンボーンの音色に非常によく溶け込むので、金管アンサンブルやラージ・トロンボーン・アンサンブルの最低音域を支える楽器としても使用されています。さらに昨今ではソロ楽器としても、「可能性を秘めた新たな響き」として再認識されています。